オトナの社会科・中東からの声を手掛かりに。

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自己責任論に抗うpart2:「ヒーロー」か「非国民」か、二択しかないのか?








■自己責任論はどこから来たのか?■






前回 part1▼の続きです。






シリアで解放された

安田純平さんを巡って、今も


「自分勝手な行動で政府に

 迷惑をかけている。

 自己責任だ」といった主張と、


「いや英雄として迎えるべき」

といった反論が、

噛み合うことなく

飛び交い続けています。




この、

「ヒーロー」か「自己責任」か

という二者択一しかない状況が、

どうにも息苦しく感じます。





自己責任ということで言えば、

安田さんが記者会見で

自身の言葉で語られた通り、

「紛争地取材は自己責任」であり、

プロとしてのミスはあったかもしれない。


取材手法やスタンスへの

批判もあるようですが、


しかし仮にそうであるとしても、

見殺しにしていいというのは

全く別問題。





そもそも「自己責任論」は

どこから始まったのか?



コチラの記事が

時系列を整理して下さってます。



▼文春オンライン2018.11.2付 

14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?

#自己責任論






14年前、イラクでの3人の

日本人人質事件当時、

弱者を叩く論理として

一気に流通した自己責任論。



14年前と、

今回の新聞の紙面を読み比べると、

現在の新聞の論調はかなり冷静だと

分析されています。



14年前は

自己責任論を前面に押し出し、

解放後の人質に対して

「3人も利口になるに違いない」等と

かなりどぎつい主張を

展開していた読売ですらも、

今回の件は批判していない。



各紙とも、自己責任論

またはそれへの反論から、

自己責任論はなぜ起きるのか、

という問題提起へシフトしてきている、と。





現在は、マスメディアより

むしろSNSの方が、

右も左も激しい状況です。


こういう時だからこそ、

少しトーンを落として考えたいのです。






■なるべくにフェアに考えるヒントは?■






今回、私が確認できた限りで

比較的フェアと感じたのは、

外交評論家・宮家邦彦さんの

指摘でした。




ざっくりまとめると、



・邦人救出は日本政府の義務。

 そこに差別はない。

 しかし交渉は相手あってのこと


・そもそもマスメディアが行かない

 危険地帯の取材はフリー記者が

 下請けしていて、それがないと

 報道が成り立たない。


・現地では人質ビジネスの市場が

 存在してるが、最近縮小傾向。


・安田さんはそういう状況を承知で

 プロとして行っているのだから、

 生きて帰ってくるのが当たり前。

 しかし仕事は出来なかった訳だから

 安田さん本人は自分を

ヒーローと思っていないだろう


・一方では「ヒーロー」と言われ

 一方では「自己責任」と言われるが、

 そのどちらでもない。



。。。といったところでしょうか。




実はこれまで宮家さんについて

「当たってることもあるんだけど、

元外交官のせいか、ちょっと

上から目線だなあ……」と

感じることもあったのですが。


今回については、

元イラクやヨルダンの大使館勤務

経験や中東調査会顧問でもある

視点は非常に真っ当だと思いました。




詳細は以下をどうぞ▼

安田純平さん帰国~中東人質ビジネスの実態

2018年10月26日 10時58分 ニッポン放送

「飯田浩司のOK! Cozyup!」(10月26日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。シリアで拘束されていた安田純平さんの解放について解説した。



▼こちらもあわせてご紹介したい

安田さん解放の「自己責任論」も「英雄論」も意味がない 危険取材の現場から

2018/10/31 12:51 ノンフィクション作家 辰濃哲郎さん




■自己確認して終わりにしないために■





その上で私個人の意見を

少し言わせていただくと。



私自身は、

「自分が出来ない事をしている人は

誰であろうと基本リスペクト」

というスタンスなので。


自分がいま行けない現地に行き、

危険を覚悟の上で

最も困難な状況にある人達の声を

聴き取ろうとするジャーナリストの

方々には、最大限の敬意を払いたいと思っています。




それを「自己責任だ」と、

安全地帯から言うのは簡単です。




そして同時に、一方的に

「ヒーロー」と持ち上げるのも

実は無責任ではないかとも思うのです。





ヒーローか非国民か、という

二者択一しかないのか。


何かあるたびに、敵味方を

峻別するリトマス試験紙に使われ、

分断が深まるこの状況を

なんとか食い止められないか。




そのどちらでもない、

等身大で向き合うことが

必要なのではないでしょうか。





ジャーナリストの方々には

報道者のタスクがあるように。


政府には政府の、

評論家には評論家の、

市民には市民の、

それぞれの役割がある。


プロにはプロの、

シロウトにはシロウトの、

各々の役割があるように。





少なくとも今は、

時事トピックとして消費して

その場限りで終わらせないこと、

今後にどう活かしていけるのかが

重要だと思うのです。



「世界はシリアを見捨てるのか?」

という問いは、今もなお

残っているのですから。




そのためにも、

安田さんが現地で見聞きした事を、

生還した貴重な体験を、

等身大で安心して語れるように、

検証の結果やミスも含めて

世界が共有できるように、

その環境が確保されることを願います。




そして同時に、

自己責任論に抗すにあたって、

小さなメディアの

構成要素である

私達ひとりひとりが、

「自己の正当性を確認して

溜飲を下げて終わり」、と

いうことにならないように、

自らのことも省みる機会に

できればと思うのです。






【当ブログ内関連記事】



2015年日本人人質殺害事件の直後に書いた記事です。

哀悼…紛争地で望まれている支援とは?ジャーナリストやNGOはその場にいるだけで人道支援になりうる。






byしゅくらむ



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筆者が知る数少ないアラビア語です。
ココでの出会いと、ここまで読んで下さったことに、感謝をこめて。
シュックラム!



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by shuklm | 2018-11-04 21:08 | 「テロ」・IS・イスラム・宗教について | Comments(0)