オトナの社会科・中東からの声を手掛かりに。

syuklm.exblog.jp

米朝会談前に・part1。「リビア方式が成功例」と言う根拠は?対北朝鮮・最強硬派の主張を聞いてみる。





▼先月27日、NHK日曜討論より 

同じ「非核化」というワードでもここまで認識のズレ

b0343370_19365004.jpeg







1■「伝える力」の必要性を痛感する日々■




史上初の米朝首脳会談をめぐり、

駆け引きが連日報道されています。



少しでも北東アジアの平和構築が

前進してほしいと願っていますが、

一方で、「交渉なんて無駄だ。

北朝鮮に今まで何度騙されてきたか。

外交努力なんてお花畑だ。

圧力を緩めるな」という意見もあります。


また、戦争までは望んでいないけれど、

「そうは言っても、北は危ないから

核放棄させないと安心できない…」

「結局アメリカを頼りにするしかない」

という意見もあるでしょう。




それに対して、

ひとつひとつきちんと根拠をもって

自分の言葉で向き合う力、

堀潤さん言うところの、伝える力」を

アップしていく必要があると、

日々ひしひしと感じています。


「ファクトに基づいて小さい主語で語る」ことで、相手に届く言葉を。




私は北朝鮮専門家でも中東研究者でもない

ただの1勤め人にすぎませんが、

シロウトが入手可能な情報の範囲で

ひとつひとつ学び考えたことを書いておきたいと思います。


現在アトピー療養中で長文が難しく、

ノート状態で恐縮ですが、

ご参考になれば幸いです。







2■「非核化」をめぐるズレが孕む危険性■





今回1回の会談ですべてが解決する

わけではないのはもとよりですが、

一番気になるのは、

「非核化」をめぐる同床異夢です。





先月27日、日曜討論より

静岡県立大学 奥園秀樹さんの指摘

「パンムンジョム宣言の英語版を読むと、

韓国側はシンプルに”朝鮮半島の非核化”

と言っているのに対し、

北朝鮮側は”朝鮮半島を非核地帯化”と

言っている。

北朝鮮に一方的に核を捨てろというのではなく、

トータルでの安全を主張している」

b0343370_19372120.jpeg





最近トランプ大統領は「リビア方式」という

ワード自体は使わなくなりましたが、

掲げている方針である

「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」、

「さもなくば圧力最大化・攻撃も辞さず」

というのは、実はリビア方式とほぼイコールなんです。





これは本当に軟着陸が難しいと感じます。






そこで、あらためて、リビア方式って具体的には何なのか、

そしてリビアはその結果どうなったのか?

というのを押さえておきたい。





まず、ボルトン補佐官や支持者ら

「対北宥和はありえない」

「リビア方式にどれだけ近づけられるかがカギ」という

最強硬派の具体的な主張を聞いてみましょう。




そして、もう一方の当事者・リビア

(アラブ世界とアフリカ)の側から

それがどう認識されているのか、

そして北朝鮮がそれをどう受け取った

のかを見ていくことで、

解決の方途を探るヒントになればと思います。





【主な参考図書・ニュースソース等】


重信メイさん著「アラブの春の正体―欧米とメディアに踊らされた民主化革命」2012年・角川oneテーマ21発行


「月刊Hanada20187月号・飛鳥新社


「原水爆禁止日本国民会議」ホームページ

http://www.gensuikin.org/nw/libya.htm


東京外国語大学「日本語で読む世界のメディア」

ホームページ&メルマガhttp://www.el.tufs.ac.jp/tufsmedia/


孫崎享さんTwitter https://twitter.com/magosaki_ukeru


アルジャジーラ英語版Twitter https://twitter.com/AJEnglish


NHK日曜討論


TBSサンデーモーニング








3■最強硬派「リビア方式は成功例」の根拠■






▼初めて買いました、「月刊Hanada

b0343370_19382546.jpeg




20187月号の島田洋一氏の記事

「金正恩を追い詰める非核化の成功例”

リビアモデル”」

から抜粋してご紹介させていただきます。

b0343370_19361804.jpeg




島田氏は、ジョン・ボルトン補佐官と

直接5・6回面談したことがあり、

リビア交渉時の米側代表だった

ロバート・ジョゼフ氏

(当時の国家安全保障会議

核拡散戦略上級部長)とも5月に意見交換し、

さらに彼の腹心の部下で首席補佐官の

フレッド・フライツ氏とも親交の深い

という、対北最強硬派。



リビア方式が成功例という根拠は?

なぜ「対北宥和はありえない」のか?





▼ボルトン補佐官(月刊Hanada20187月号より)

b0343370_19355934.jpeg





**抜粋ここから****



※≪≫箇所はしゅくらむによる補足です





”ボルトンが、目指すべき「完全かつ

検証可能で不可逆的な非核化」の

成功例として常々上げるのが、

「リビア・モデル」だ。”



”実際いかなるものであったのか”




”1.最高指導者に直結する対外情報機関

(CIAとMI6)幹部が、交渉および

廃棄・検証の初期段階を担った。”


”「雰囲気作り」のための譲歩に

傾きがちな国務省や、動きが鈍い

国際機関は関与させなかった”


≪途中から関与≫




2、合意成立の1ヶ月後には

米軍機と戦艦による廃棄対象物質の

海外搬出が始まり、3ヶ月後にはほぼ完了。


≪驚異的なスピード!!≫



”合意発表から約一か月後の二〇〇一年一月、

米海軍のC-17輸送機が、

まず最も重要な物質・パーツを、

リビアから米テネシー州のオークリッジ国立研究所に搬出した”


≪一国の安全保障にかかわる兵器を、

一国に移転していたという事実…≫





3、すべてのウラン濃縮用機材や原料を

廃棄対象とした「平和利用」目的の部分、

すなわち軽水炉原発の燃料(低濃縮ウラン)

製造用の部分は廃棄対象から除外する

といった措置は認めなかった。


≪イラン的な平和利用も認めないということ≫




4、核のみならず化学兵器、

射程三百㎞以上の中距離ミサイルも

廃棄対象となった




5、合意成立後、疑惑施設の査察要求に

リビアが即時全面的に応じた。


米英諜報機関が把握していなかった

関係施設に自主的に案内したケースもあった。


「完全かつ不可逆的な」廃棄か否かは

物理的には照明困難で、査察に対する

態度で判断するしかない。

リビアは「合格」であった。





6、テロの精算も同時に行われた。


具体的には、一九八八年十二月二十一日

のパンナム機爆破テロ(ロッカビー事件。

スコットランドのロッカビー村上空で発生。

死者二百七十人。うち米国人百九十人、

英国人四十三人)の責任を

リビア政府が公式に認め、

犠牲者遺族に対する二十七億ドルの

賠償金支払いを約束した。


また、中東テロ組織に対する支援の

打ち切りも約束した。





7、リビアへの見返りは「見返り」は、

核・ミサイルの廃棄完了後に提供された。


すなわち、金融制裁と航空機往来禁止解除が二〇〇四年九月、

テロ支援国家指定の解除が二〇〇六年六月などである。





8.サダム・フセインの悲惨な末路を

指し示しつつ、カダフィに斬首作戦の

恐怖を与え続けた。




20031213日、

イラクのサダム・フセイン元大統領が

地下の穴倉から米軍に拘束される≫




”その3日後に当たる十六日、

ロンドンでの協議において、

リビア側は全ての大量破壊兵器および

関連物質の廃棄に同意する。


サダムの拘束がカダフィを大いに動揺させた、

というのが米側の理解であった。”




”「当時、カダフィは偏執狂(パラノイア)的に

米軍の攻撃を恐れていた」とジョゼフは言う。”




”米英側は、早く見返りが欲しければ

早く全面廃棄を実行せよ、との立場を変えなかった”



CIAMI6のような諜報能力を持たず、

軍事力の後ろ盾もない国際機関では、

独裁国家の秘密核開発を暴くことは出来ない”


”IAEAのような国際機関は、

多くの場合、むしろ足を引っ張る

存在となるというのがジョゼフの総括である”






***抜粋ココまで***





この過程では、

リビアに搬出されようとした核物質を

米英独伊が船舶臨検で発見したり、

諜報機関が主導権を握っていました。



また、米側は、

かつてアメリカの”子飼い”だった

フセイン元大統領の末路に震撼した

カダフィに対して、

「実際にレーガン政権下で実行された

斬首作戦を今度こそやるぞ」、という

脅しをかけ続けています。

その結果の核と武器の解体でした。




この文章では、それをもって

リビアモデルの成功とし、

北朝鮮が求める「段階的な非核化」は

その対局であり、絶対に受け入れるべきでない、と結論付けています。







4■「リビア方式成功」のカギは棍棒外交■






これは正直凄いなと思いました。

「棍棒外交の勝利」であることを前面に出して、

はばかることが無い。



確かに、「非核化」というミッションについては

合意から3か月で完了という、物凄い高速で

ほぼ完璧に実現されたといえるでしょう。

その意味では「大成功」と言えます。




しかし果たして、こういうやり方を、

当然の世界スタンダードとしてよいのでしょうか?




「ならず者国家」認定した相手を

手段を択ばず脅して締め上げていうこと聞かせる。


世界が積み上げてきた国際法も、

国際機関も関係ない。




こういう振る舞いをしてきたから、

アメリカというナショナルな枠組みに

対して反感や恨みを買ってしまう

のではないでしょうか。


「なんでアメリカは核兵器も原発も持ってて

戦争やりたい放題でOKなんだよ?」と。


だから「欧米の唱える正義と自由」に

異議を唱えるISや、それに共鳴する

ホームグロウンテロリストが

産まれてしまうのでは…と思うのですが。





しかし、一方で、

こういう棍棒外交を支持する人たちや、

あるいは「アメリカのやり方は乱暴

かもしれないけど、守ってもらってる

んだから仕方ない」と感じている人たち

にも、届く言葉を増やしていく必要が

あるでしょう。




キレイごとでなく、

「核兵器を持つ独裁国家」と

どう向き合っていけばいいのか、と。






それでは、そのリビアは

非核化後、どうなったのでしょうか?


そしてそれは北朝鮮にとって

どういうものとして認識されたのでしょうか?





今度は、中東専門家・ジャーナリストで

リビアもウォッチしてきた重信メイさんや、

中東メディアの視点を借りて見てみます。



アラブ世界・アフリカの側から

逆照射すると、全く違う姿が現れてきます。





【続きます】







【当ブログ内関連記事】

▼歴史的南北会談。韓国の友人たちの願い・分断を解決する最後の1ピースとは??


▼何度も危機を経験してきた韓国。兵役経験者に聞いてみた・Part1;北朝鮮の隣で暮らし続けるということ。



【関連カテゴリー】



byしゅくらむ



シュクラムは、アラビア語で「ありがとう」。
筆者が知る数少ないアラビア語です。
ココでの出会いと、ここまで読んで下さったことに、感謝をこめて。
シュックラム!



↓よろしかったらポチポチっと押していただけますと励みになります

にほんブログ村  にほんブログ村 人気ブログランキング

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ にほんブログ村 旅行ブログ 中東旅行へ  
                

by shuklm | 2018-06-09 20:10 | 安保法・安全保障・日米関係/戦争と平和 | Comments(0)