人気ブログランキング | 話題のタグを見る

オトナの社会科・中東からの声を手掛かりに。

syuklm.exblog.jp

「私たちの戦後70年談話」:28年前、日本の加害の歴史に直面した南京。


戦後70年目という節目に当たり、

テレビ番組で「私たちの70年談話」を募集したり、

市民レベルでも「民衆談話」を発信しようという

ムーブメントが動いています。


それぞれが身の丈の言葉で発信

していくことが大切だと思うので、

私も自分の体験から言えることを書いてみます。





1987年、16歳の高校生の時に、

ツアー旅行で中国を訪れたことがあります。


日中友好を目指すボランティア団体の主催だったので、

行程には日中戦争の戦跡訪問も入っていました。



1985年に落成したばかりの、

南京大虐殺の資料館。

建物の外壁に大きく掲示された建物名は、

「南京大屠殺遇難同胞紀念館」。



「大屠殺」という中国語表記の

あまりのストレートさに

たじろぎながら入館すると、

文字通り家畜のように無造作に

殺されて穴に遺棄された

「万人坑」の再現に足がすくみました。


「100人斬り」を競った

日本人将校の写真パネルや、

万人坑から実際に掘り出された

何人もの人骨の展示もありました。



私たち訪問ツアー参加者以外は、

来館者は中国の人ばかり。



食い入るように展示物を見据えたまま、

身じろぎもしない男性。


お線香や献花を手向けるスペースで、

嗚咽し続けていた女性。


「いま自分が日本人だとわかったら、

生きて出られないんじゃないか」と

感じるほどの雰囲気でした。




全ての展示を見終えて、

どうにもいたたまれずに、

おそるおそるツアーガイドの

中国人の男性に尋ねました。



「恨んでいませんか…?」と。



30代の彼は静かに首を振って、

「恨んでいませんよ。

悪かったのは日本の軍国主義です。

あなたたち日本人は悪くないです」

と言ってくれました。





当時は、改革開放経済が始まる前。


中国ではまだ個人旅行は

解禁されておらず、

入国できる日本人は団体旅行の

ごく限られた人間だけでした。


ツアーガイドの人たちも

全員が国家公務員で、

公式見解を口にした面はあるでしょう。



それでも、中国の人たちが

「日本人に敵討ちはしない」と

赦してくれているから、

今の日本は存在できている。


そう感じて救われたと思った次の瞬間、

同じツアーの日本人男性が

「シナ人が、シナ人が」と

連発しているのを聞いて飛び上がりました。


「やめて下さい!」


いままさに日本人が「シナ」で

やってきた歴史を見て来たばかりなのに、

中国の人たちの感情を逆なでするような

ことをなんでするのか?!



しかし昔中国に滞在していたという

その高齢男性からは

「今の若い人にはわからないからねえ」と

全く取り合われず、

論理立てて止めさせることもできず、

自分の無力さ加減に

生まれて初めて悔しくて涙しました。






南京大虐殺については、

犠牲者の数など事実が確定していないと

論争があるのは承知していますが、

私は現在でも、

虐殺は数の問題ではない、と

考えています。



30万人でなく3万人ならOKなのか? 

そうではないでしょう。


数が少ないからと言って、

その事実自体が無かったことには

できるわけではない。





少なくとも、中国政府も

「中国人も日本人も日本軍部の犠牲者。

悪かったのは軍部で、

日本人が悪かったわけではない」

というレトリックで、

「戦後賠償も永劫に求めるわけではない」と

手打ちにしてくれたから、

戦後の日本の独立と復興・

経済成長は可能だったわけです。





残念ながら、

現在の中国が軍事的な拡張を

進めていることは事実でしょう。


国内の不満をそらすために

対外的にわかりやすい「敵」を

仕立てあげるのは、

どこの国の政治屋も同じです。


だけど、その種を日本が撒いてきたとしたら?


「中国がお人好しにしてたから、

欧米列強や日本などの帝国主義にやられた」と

いう教訓を与えてしまったとしたら?


「もうお人好しにしててやられたりしない」と。





私たちを受け入れてくれた中国の人たちが

いま日本のことをどう感じているのか、

私には知るすべがありません。


外国人や日本人が珍しくて、

私達が鐘楼に登れば人だかりができ、

泥だらけの子どもたちが

恥ずかしがりながら近づいてきたのは、

もう30年近く前のこと。


いまはきっと彼らも変わってしまっているでしょう。




だけど少なくとも、

こちらから「もうこれ以上謝るもんか」と

扉を閉ざすことはしたくない。


本音はともあれ、

でも現実の行動で赦してくれた

人たちがいたことを

忘れたくないと思うのです。






byしゅくらむ


シュクラムは、アラビア語で「ありがとう」。

筆者が知数少ないアラビア語です。

ここでの出会いと、ここまで読んで下さったことに感謝をこめて。

シュクラム!



↓よろしかったらポチっと押していただけますと励みになります↓

にほんブログ村 旅行ブログ 中東旅行へ   

にほんブログ村   人気ブログランキングへ


by shuklm | 2015-08-15 21:02 | 中東・イスラムなどからの声