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オトナの社会科・中東からの声を手掛かりに。

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公開初日、満員札止め! シリアの若者を追ったドキュメンタリー「それでも僕は帰る」




2000年代、

日本に留学で滞在していた

シリア人の友人。


祖国の民主化を切望していた

彼が話していたこと。

「僕らの国にはいま自由がない。

だけど、とてもいいところなんだ。


日本ではあまり知られていないけど、

シリアは、ダマスカスとか

アレッポだけじゃないよ。



長い歴史があって、

素晴らしい遺跡も沢山ある。

緑も多くて自然も豊かなんだ。



いつでもいいから遊びにおいでよ。

日本人なら、どこへ行っても

大歓迎されるよ。

アラブは皆、日本が大好きだから」、と。






それがいまや、

「どこにも安全な場所がない」

地になってしまったシリア。





スクリーンの向こう側に

いるかもしれない

シリア人の友人の姿を探しに、

映画館へ向かいました。



友人が心から切望していた

シリアの民主化は、

どうなってしまったのか。



いま現地では、いったい

何が起こっているのか。



公開初日、満員札止め!  シリアの若者を追ったドキュメンタリー「それでも僕は帰る」_b0343370_19583831.jpg


▲『それでも僕は帰る —シリア 若者たちが求め続けたふるさと』劇場フライヤー


▼予告編動画はコチラ

https://youtu.be/AAqw-IuL3Ys




***映画レヴューここから***




2010年に始まった「アラブの春」。


その影響を受けて、2011年、

シリアでも民主化運動が始まる。



スクリーンの中には、

自由と民主主義を求めて声を上げた

無数の人たちの思いが溢れていた。




その中でカメラが追うのは、

「アジアNo.2ゴールキーパー」と称され、

サッカー選手としての未来を嘱望されていた

19歳の青年バセットと、

彼の友人で著名な市民ジャーナリストの

オサマ24歳。





人を惹きつける魅力とエネルギーに満ち

若者の声を代弁するプロテストソングで

民主化運動のリーダーとなっていくバセット。





「俺達はただ、自由が欲しいだけなんだ!」



「兵士たちよ、なぜ人々を殺すんだ? 

 軍と人々は兄弟のはずだ」。



彼が即興でラップするのに合わせ、

声を限りに歌い、

手拍子と太鼓を打ち鳴らし、

肩を組んで踊り続ける若者たち。


その姿をネットで配信し、

展望を広げようとするオサマ。




その自由への渇望に、

胸が熱くなる。





その非暴力の運動が、

なぜ武力抗争に変わっていってしまったのか。



誰も望んでいないのに、

なぜ彼らは武器を取り、

戦い続けなくてはならなくなってしまったのか。




転機となったのは、

バセットの故郷ホムスで、

170人もの住民が何者かによって虐殺された事件。



瞬く間に、政府軍との間で

激しい戦闘が始まる。





銃弾が飛び交い、

迫撃砲で地面が揺れて

ガラスの破片が降り注ぐ中、

若者たちが直面する日々の現場に、

命懸けでカメラはとどまり続ける。





シリア政府軍の攻撃で

変わり果ててゆく街並み。


たった6人でやってきて、

30分で引き揚げてしまった

国連の監視団員。





「国連はなぜ助けてくれないんだ?」



「世界中の兄弟たちよ、

 この叫びを無視するというのか?」



周囲を鼓舞し、

仲間と談笑しながら、

あるいはむせび泣きながら

絞り出される言葉の数々が、

突き刺さる。






シリアの彼らに対して、

「世界はあなたたちを見捨てていない」

というメッセージを、

どう伝えることが出来るのか――。




重い問いかけが残る。







*******






上映後、

満員の映画館の外に出ると、

何事もなかったかのように

渋谷の街の夜景が広がっていました。



その光景は、以前シリア人の友人と

一緒に渋谷でご飯を食べた時に

「アメリカの戦争でメチャクチャに

やられたのに、こんなに豊かに

復興した日本って凄いよ」と指さした、

まさにその場所でした。




その時、彼は言っていました。




「僕らの国には自由がない。

だけど、日本の政権は

『フリーダム&デモクラティック・

パーティ』でしょ?」と。



最初意味が分かりませんでしたが、

少ししてから

「そっか、『自由民主党』のことか! 

言われてみるとそうだった!」と

気づいたのですが。





彼らが願ってやまなかった

「自由と民主主義」を、

既に手にしているはずの私たち。



しかしその民主主義は、

「不断の努力」がなければ保てないことを、

安保法案強行採決等の過程を通じて、

私たちは改めて思い知らされました。




そういう今、私たちは、

彼らの声をこうして知ることが出来る。






「この映画を、どうしても日本に届けたい。

 留学していたシリアに対して、

 何か出来ることをしたい」という、

たった一人の女性の思いから始まった

この映画の上映プロジェクトは、

クラウドファンディングで

次々と寄せられた資金と

賛同者の想いが寄り集まって、

ついに昨日劇場公開を迎え、

今後各地での上映が続々と決定しています。



そして、プロジェクトを企画した

配給会社の女性のもとには、

いま見知らぬシリア人からも

応援のメッセージが届いているそうです。



彼女の思いはぜひこちらからご覧ください

(日本語・英語・アラビア語)↓

https://www.facebook.com/soredemo.kaeru/posts/1619368961634888







「紛争地」に関わることは、痛みを伴います。


途方もない現実に対して

自分はいったい何が出来るのか、

日常生活の間でどうバランスを

取ればいいのか苦しむことになる。



だけどその痛みがあったからこそ、

彼らの声が遠く離れた日本まで

たどり着くことが出来た。





同じ時代を生きている私たちには、

まだ出来ることがあるはずだと思うのです。






映画『それでも僕は帰る 〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』公式サイト

http://unitedpeople.jp/homs/


FB公式ページ

https://www.facebook.com/soredemo.kaeru?fref=photo


市民上映会開催申込み受付中!

https://www.cinemo.info/jisyu.html?ck=37





【当ブログ内関連記事】


シリア人留学生の言葉2。イラク攻撃直前にきいた、「イラクと独裁者と中東の民主化」のこと。

http://syuklm.exblog.jp/24177306/


シリア人留学生の言葉3。友人が日本を去る時に語ったことは。

http://syuklm.exblog.jp/24196766/


シリア・「乗っ取られた」民主化の声。

http://syuklm.exblog.jp/24243586/





byしゅくらむ


シュクラムは、アラビア語で「ありがとう」。

筆者が知数少ないアラビア語です。

ここでの出会いと、ここまで読んで下さったことに感謝をこめて。

シュクラム!



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by shuklm | 2015-08-02 20:03 | シリア人の友人のこと・難民・シリア関係