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オトナの社会科・中東からの声を手掛かりに。

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70年越しの宿題・その2。「自衛隊は軍隊じゃない」という理屈が、自衛隊員を危険に晒す。





■「軍隊じゃない」とすると、国際人道法で守ってもらえない!




いままさに自衛隊員が現場で直面する現実として、

絶対はずせないと思われることを書いておきたいと思います。




最大の問題は、

自衛隊員が任務中に「交戦」状態となり、

その交戦相手に拘束されたりした場合、

「国際法に則って、捕虜として人道的に扱ってくれ」って

要請する法的な根拠がない、ということです。





2015920日放映「サンデーモーニング」でも指摘されていました





****放送内容書き起こしココから****


「日本は紛争当事国ではありませんので、

仮に自衛官が拘束されたとしても、

ジュネーブ条約の捕虜としての

取り扱いを受けることが出来ない。


相手国の刑法で裁かれて、死刑になったり

懲役刑になったりという心配がある」



「現在の南スーダンPKO活動で、

今後は駆け付け警護が出来るようになる。


安保関連法では合法だが、

殺人罪・傷害致死罪で裁かれるリスクは

ゼロではない」




***書き起こしココまで***







もう少し詳しく見てみます。


ジュネーブ条約は、戦争国際法上、

捕虜の人道的扱い等について定めたもの。



「交戦していた相手国の兵士でも、降伏して捕虜になったら、

 拷問・虐待したり、人質にしたり殺したりしちゃいけない。


 ケガしてたらちゃんと治療を受けるのを

保障しなくちゃいけない」っていう取り決めで、

日本も批准してます。




が、このジュネーブ条約は、交戦時は、

紛争当事者=「交戦国」にしか適用されない。



日本には現憲法上では「交戦権」がないので、

現状では交戦主体にはなりえません。


しかも自衛隊員は国内的には国家公務員ですが、

身分的には軍人ではない。


軍人じゃないなら、「武装した民間人」

に過ぎないわけです。


なので、戦争国際法の適用が受けられない。


現地の人を死亡させてしまった場合、

ただの殺人者としてしか扱われないということです。





相手からすれば、「交戦も宣言せず、

俺らんトコに勝手に来て勝手に戦闘やってんだから、

それを止めるために捕まえたらこっちの勝手だろ」

ってことだから、


考えたくもないけれど、捕まった自衛隊員が、

最悪、人質にされたり見せしめ的に殺されたりする可能性もある。



ISに捕まった湯川さんや後藤さんのような目に

遭わされる可能性が格段に上がってしまうということ。




だって彼らを守る法的な根拠が全くなにもないんだから。







今までは、こんな心配は、少なくて済んだんです。



これまで自衛隊が海外で担ってきたのは、

選挙監視や道路などのインフラ整備、

教育・保健・医療分野の協力だった。


政権の側も、最も戦闘から遠い地帯と場面に

なるべく限定してきた。



そして何より、自衛隊員自身が、

現地の人と衝突しないよう、

隊員にも犠牲が出ないよう、

それこそ心身を削るような細心の注意を払って

任務を遂行してきたから、

奇跡的に一発の銃弾も撃たず

何も起こらずに済んできた。


もしやむを得ざる発砲だったとしても、

正当防衛の範囲だった。




しかし今回の安保法制で駆けつけ警護

住民保護を正式な任務に追加した結果、

直接現地の人を銃を向けたり発砲する場面に

自ら飛び込まなくてはならなくなってしまった。


「たまたま正当防衛」じゃない。

撃つのが仕事になるんです。



公平中立のはずのPKOですら、

最新のコンゴPKOをはじめ

そうしないと「住民保護」ができない状態に

なっているのだから。





それなのに、自衛隊員を国際法的に

守ることが出来ないなんて。



法治国家どころか、こんな無法な状態に

彼らを追いやっていいのか





だから、憲法を改正もせずに集団的自衛権で

派兵なんかしちゃダメなんです。


来年5月からの南スーダンPKOの新任務に

行かしちゃいけないんです。






だけど、じゃあ、

集団的自衛権の行使でなければいいのか。


個別的自衛権の行使なら問題ないのか

というと、そうじゃないんです。



それは「日本から遠く離れたどこかの国の戦場」の話ではなく、

もっとありうる事態として「最大の可能性とリスク」は、

日本領海の防衛出動である、と

伊勢崎賢治さんがものすごく重要な指摘をされています。







領海警備(個別的自衛権)でも、自衛隊は法的に守られない!






**シェアココから******



伊勢崎賢治さんFacebook  915日付より



日本有事、つまり、”戦争”の最大の可能性とリスクは、

日本領海内における防衛出動の時です


(遠い中東の”アメリカの戦争”ではありません。


こちらはほとんど集団的自衛権ではなく

「集団安全保障」の世界になっていますから)。



日本領域で自衛隊が「交戦」してしまったら。


自らの自衛隊員が戦時国際法/国際人道法上の

捕虜にならないと公言する、つまり、

同法上の「交戦主体」にならないと公言する日本が

「交戦」してしまったら。



警察行動の「武器使用」と、

国際的に軍事組織と見なされる主体による「武力の行使」は、

同じ武器の使用でも、天と地ほど違います。


その間には、「武力の行使」を統制する

同法の厚い壁があるのです。


”シームレス”では全くないのです。




”いかなる”「交戦権」も放棄すると

高らかに謳う憲法を持ちながら、

「交戦」の可能性をより誘発させる

ジェスチャーをつくりつつある日本。



それも、国際法において”保護観察”の身が、

国際法の”元締め(中国)”に相対しているのですから、

「交戦」になったら、国際法は日本の味方になってくれません。



”事後”に、国際司法の場にその戦いを移しても、

海上(空はもっとそうですが)交戦は

陸上に比べ圧倒的に状況証拠が残りにくい。


日本にとって「交戦」は、自殺行為なのです。



民主・維新の領海警備法案は、自民案より、

ここの部分だけを先鋭化させていますから、

国連憲章を基調とする国際秩序に対する

無謀な挑発行為としか見えません。

”戦争法案”はこっちの方です。



だから「戦争法案反対」「安倍政権打倒」

だけではダメなのです。



水を差してスミマセン。残りの言い訳はライブで。






*****シェアココまで**





つまり、いくら「領海警備行動です、個別的自衛権の範囲です」って主張しても、

「交戦権は認めない」ってことになってる

現憲法下で交戦したら、国際法的には

一切保護してもらえないってこと。




自衛隊員がイレギュラーな状態で

戦闘に参加するということは、

国際法上イレギュラーに扱われても

文句言えないってことなんです。






この問題の延長線上で考えると、

もし仮に、本当に自衛隊員が拘束されてしまう

ような事態が起こってしまったら、

「国際法に則って捕虜として扱ってくれ」と

要請せざるを得ないでしょう。



しかし国際法の適用を受けようとすれば、

「交戦主体」にならなくてはならない。


そうすると「交戦権」を認めていない

現憲法から何から国内法は崩壊してしまう。



ヘタすると、「自衛隊を守るためには

交戦権が必要だから、憲法を改正しなくてはならない」とか、

ホントに訳のわからない事態になりかねない。





たとえ安保法制を廃案にしたとしても、

この法的な裏付けがない状態は変わらないのです。




だから、自衛隊の位置付けを曖昧なままで、

彼らを「前線」に立たせてはいけないんです。

海外でも国内でも。






そういう意味においても、「こまでが自衛権か、

安全保障をどう考えるのか、そのためには

自衛隊にどこまでお願いしなくてはいけないのか」

ということを、私たちが決める必要がある。




これが、当面の「宿題」のひとつだと思うのです。





もちろんそれは、「日本は国際的に

こういう方向を目指したい。

だから自衛隊にはこういうことをやってほしい」

ということとくっついている。




少なくとも「自分はどうしたい」のか。




模範解答などありませんが、私自身も

自分なりに唸りながら取っ組んでいる途上です。


不完全を承知の上で、まずはそれを表明しながら、

議論を少しでも前向きに深める方向に寄与したい。




次回以降、さらに掘り下げていきたいと思います。






【当ブログ内関連記事】


20154UP記事 【時事】「国際平和支援」の最前線。報ステ「緊迫のコンゴPKOに密着」↓

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20155UP記事 【シェア】再録「イラク派遣 10年目の真実」↓

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2015年2月15日UP記事 「邦人救出できない法は変えるべし」という主張が無視しているもの。アフガンでもイラクでも、「日本人だから攻撃されにくかった」理由。↓

http://syuklm.exblog.jp/24136507/




※文言若干修正しました(2015.9.25)
 リンク追加しました(2015.9.28)



byしゅくらむ



シュクラム」はアラビア語で「ありがとう」。

筆者が知数少ないアラビア語です。


ここでの出会いと、ここまで読んで下さったことに感謝をこめて。

シュクラム!







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by shuklm | 2015-09-25 07:46 | 「国際貢献」・PKO・自衛隊